何も失わず。何かを得ることはできないのです。
大学からの帰り道。傘をさすかどうか迷うほどの小雨の中、僕はある女の子と
出会いました。みたところ、15,6歳といったところ。その子は道の隅で小さく
うずくまり、肩を震わせていました。
はじめはそのまま通り過ぎようかと思ったのですが、やはり気になりまして。
少し迷ったすえに声をかけてみたのです。
『あの、傘、使う?』
今思えば、なんとも的外れな声のかけ方です。しかし、そんな僕の呼びかけに
彼女はゆっくりと顔を上げて、僕のほうを見てくれました。泣き腫らした目で。
まだあどけなさが残る少女。けして美人ではないけれど、優しげな顔立ち。
そんな彼女を見て僕はなぜか、ひどく彼女の笑顔がみたくなったのです。
そして、必死になってしゃべり始める僕。しかし物憂げな彼女の瞳にはなんの
変化もありませんでした。ああああ、どうしよう。どうしよう。
・・・そうだ。花をだそう!ポンッて花を出そう。僕が使える唯一の魔法。種も
仕掛けもない魔法。とはいっても、練習すれば誰だってできるようになるもの
だから大したものではないけれど・・・。
そして僕はむむむ・・・と低くうなるとと、小さな、ほんの小さな花を、ポンッ!と
出したのです。
お尻から。
今の僕には、これが精一杯・・・。
・・・・
あ、れ?
ダメ、だった?
なんら変わらぬ、彼女の表情。むしろ、いくぶん強張ったような。気が。
うわぁどうしよう!どうしよう!あわわわ!ぴきぃ!(股間を自ら強打しながら)
すると彼女は、そんな風に動揺する僕をみて
『・・・ふふっ』
と、小さく笑ってくれたのです。やった!
そして、その花を尻から優しく引き抜いてくれたので、ぉふ。
あはは。ようやく笑ってくれた。よかった。そう、君にはその花のような笑顔
の方がずっとよく似合うよ・・・
・・・そう言おうと思ったらさ。彼女。
なんか、その花、また挿してきた。そのうえ挿したり抜いたりし始めた。
・・・え、や。お嬢さ、ふ!お、お嬢さん?っあ。そ、そういうことじゃ、なくて、
ふひ。ぼ、僕は君にそのは、花、をふ!うけとって欲しい、ほひぃ!!だけ、
なんで。で。そ、そんな出し入れす、るぅ!ひ、必要はないのでああああああ
ああああ!!
あああ
・・・ぁ。
あ、あげく、通報された。なんでよ。
===追伸===
世の中、そんな出会いもあるんじゃないかと思いまして。
だから僕は、日々お尻に花を入れる練習をしているのです。するか、バカ。
(してます。)
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