【家族の肖像】
僕には、姉が1人いまして。
彼女は、僕にトラウマを作るのが大変上手なのです。
姉は、小さいころチョウとガが大嫌いな子供でした。
アパートの壁などに張り付いているガを見てはおびえて親の影に隠れる姉。
幼い僕は、そんな姉の姿を見て
『姉ちゃん、なんであんなのが怖いの?』
と質問をしてしまったわけです。愚かにも。(当時僕は虫大好きッ子でした)
質問を聞いた姉は、にやりとほくそ笑むと
いそいそと自分の部屋に入っていき、取り出してきたのは昆虫図鑑。
その図鑑をバッとひらく。
『いい、フチ?これ見なさい。』
そういって指さしたページに載っていたのは、
世界最大の蛾・ヨナグニサン。
うっわーこれデッケー!スッゲー!っと、素直に驚く僕。
そんな僕に対して、姉は静かな声で語りだしたのです。
・・・・この蛾ね、羽を開くと、25cm以上にもなるの。
ほんと?!すごい!でっかいなぁ!
そうだねぇ。25cm。おっきいよねぇ?
・・・フチの顔より、おっきいよねぇ?
・・・え?僕の・・・顔?
ねぇ、フチ。もしこの蛾が、飛んできてさ。
フチの顔にくっついたら、どうする?フチ、息できないよ?
・・・・・これ、くっつくの?
くっつくかもよ?そしたらきっと、取れないよ?
ねぇ、どうしよっか?
・・・・
・・・ど う し よ っ か ?
・・・そんなわけで僕は、蛾やチョウが怖いのです。
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