カイワレメガネ 

【恋の毒薬+恋の奴隷】との共同企画です。


【カイワレメガネ】は天然パーマのキリカスを固めたものに、

カイワレ大根を植えて育てようという企画です。目指せ自給自足。

一人でやるには憂鬱すぎるので、恋の毒薬+恋の奴隷の人にも

一緒にやってもらいました。新世紀型セクハラ。


  【
前置きみたいなもの】 


  
7月1日 / 7月2日 / 7月3日 / 7月4日 / 7月5日 / 7月6日 / 

  7月7日 / 7月8日  


  
7月16日・エピローグ】

前置き、書いてたらクソ長くなったので。途中でやめました。



 
・7月1日 (木)




 今日から、髪の毛にカイワレを植えていこうと思う。



 手元にあるのは天然パーマは二種類。

ビニール袋に無造作に入れられたものと、瓶詰めにされたものだ。

瓶詰めにしたのは、かのんさんに渡しやすくするためだった。

ちなみに大小2つの瓶にわけたのだが、彼女は小さい方一つしか

受け取らなかった。臆したか。










 瓶詰めにされたブツ。
 かのんさんは右の小さい方のビンと、
 別に持っていった袋詰めの髪の毛を持って帰った。




 僕は少し考えた末、瓶詰めの髪の毛はひとまず置いておくことにし。

ビニール袋の方から髪の毛をとりだし、それを丸めることにした。

そして丸めたそれを、豚肉の入っていたスチロールの器に乗せた。







 なんだこれ。普通に気持ちが悪い。
 隣にあるのは、小瓶に入ったカイワレの種。


上から見た図






 完全に自立している。
 うっすら映る影が、立体であることを示す。
 サイズ検証のため、腕時計を置いてみた。


横から見た図


 ・・・なんだ、これ。


白いスチロールの上に鎮座する、黒い、球形の、何か。これは、何だ。

それを携帯カメラで、写し続ける、誰か。お前は、誰だ。


・・・僕か。僕だ。そして、これは僕の髪の毛だ。

あまりに不可思議に光景に、自分を見失いそうになる。危ねぇ。



気を取り直し、早速種を植えることにする。

瓶から10粒ほど取り出し、丁寧に植えていく。



茶色いのが、種






 ”植える”といより”埋め込む”といった感触。
 実に不快。ひどく憂鬱になる。


 なかなかうまく埋め込むことが出来なかったので、この塊の一部をむしりとる。

それにより出来た空間に種を入れて、むしりとった部分で蓋をする。

あとは、おにぎりの要領で固めることにした。とりあえず成功。



 仕上げに水を与える。

本来なら霧吹きでやるべきなのだが、生憎手元にない。

一時は霧吹きを買ってこようとしたのだが、この企画にそこまでする

価値があるのかと考えたところ。考えるまでもなく、NOという答えがでた。

冷静、僕冷静。


よって、手を濡らしてそれをはじく事で水をやることした。貴様らにはこれで十分だ。

・・・・そう思って大胆に水をかけたところ。







 見事に崩れた。ちょっとショッキング。
 握り方が甘かった。
 流れ出た髪の毛が、さらに憂鬱にさせる。


弱崩壊。

天然パーマは、たとえ切られた後でも、ナイーブな存在であること知る。

崩壊した部分を補正するか迷ったが、結局そのままにすることにした。








 
・7月2日 (金) 





 カイワレ、二日目。夜。


 思いのほか帰るのが遅くなってしまった。23:30、帰宅。

この日はラジオをやる予定だったため、そのことで一日頭がいっぱいだった。

そのため僕は、朝からすっかりカイワレのことを忘れていた。二日目なのに。



・・・・いや、無意識のうちに、なかったことにしたかったのかもしれない。



 24:00からのラジオ放送のため、急いでセッティングを進めていく。

そんな中、視界の隅に映る黒い塊。



 あ、カイワレ。



 ここへ来て、ようやく思い出す。そういえば朝も全然見てなかったや。

まぁでも。昨日の夜植えたばかりだから、問題ないっしょ?変化ないはず。

そもそもテンパから芽が出るっつー話もあやs









 あ、なんか、白いのが。



わかりにくいけど、芽です。。






 はえてるー!



 うわー・・・・うわー!

植えてから24時間たっていないよ!心の準備ができてないよ!

何だ、この・・・・闇の中でうっすらと。ひとつだけ、輝く・・・。


にわかに興奮する僕。どうする?どうする?!と、とりあえず、かのんさんに!

というわけで、この興奮と事実を伝えるべくかのんさんに電話。


 プルルルル。ガチャ。



 
『ちょ!かのんさん!生えてます、マジで生えてますよ!!』



 すると、かのんさんは。落ち着いてこう言った。



 
『ええ。ウチも、昨日から生えてますよー。』




 ・・・え?

  ええー?なんでアンタ、そんなに冷静なのー?


あまりに何気ない対応に、とまどう僕。・・・え?あの。ほら、生えてるんだよ?

テンパから、カイワレ生えてんだよ?もっと、なんつーか。驚きは?ないの?


そんな思いがめぐる中、少し彼女と話をする。

そうするうちに僕はようやく気づいた。彼女が驚かなかった理由が。



  彼女は、信じていたのだ。天然パーマのもつ可能性を。

  天然パーマには、カイワレを育てるだけの力があることを。

  テンパである僕自身よりも、ずっと。ずっと強く信じていたのだ。




そう思うと、僕は無性に自分が恥ずかしくなったのです。なるか。あほか。

大体なんだよ、テンパの可能性って!(髪の中でヒナを孵化させながら)










 
・7月3日 (土) 





 カイワレ、3日目。昼。



  昼過ぎに、目が覚めた。

今日はゆっくりできると思っていた矢先、先輩に呼び出され慌てて研究室へ。

カイワレを見忘れる。水もやり忘れた。

・・・ああ、大丈夫だろうか。



 いつの間にか、カイワレを気にかけている自分がいた。

・・・ああ、大丈夫だろうか。僕。





 夜、11時過ぎに帰宅。



 僕のささやかな心配をよそに、昨日生まれたてのカイワレは元気だった。









葉っぱが、ひらいてました。



さらによく見てみると










 あ、なんか、二つになってる。(左の隅)



二つ目の芽がでていた。なんだか嬉しい。

が、昨日ほどの興奮はない。その代わりに僕の中にあらわれた、二つの自分。


 カイワレが成長していることに対する純粋な喜びを感じている自分。

 そして、明らかに不可思議な光景を見つめながら

 (ねぇ、これ意味なんの?楽しいの?)と冷めた目で自問自答している自分。



これがいわゆる、冷静と情熱の間、というやつなのだろう。


 ・・・ああ、気をつけろ僕。

 この企画、少しでも冷静サイドに流れたら、ダメだ。





 カイワレを育てることを通して、情熱を持ち続けることの重要性に気づいた。

この調子でカイワレと共に僕自身も成長していきたいと思う。思わない。









おまけ。






 多めに水を与えた。
 天然パーマは水をはじく。キラキラ光る。
 きれいだが、汚い。


接写




 
・7月4日 (日) 





 カイワレ、4日目。昼。


 にちよう やすみ 。 でも だいがく 。 やすみ なのに だいがく 。



 と、よだれを垂らしつつウツロな目で今日も研究室へ。けけけけけけけ!

当然、カイワレは見忘れた。




 夜、10時過ぎに帰宅。驚く。


 







 なんか、一本だけ異様に伸びてる


 しかも、この急成長しているカイワレは一昨日・昨日に芽をだしたものではなく

いきなり現れた新手のカイワレである。一体何が。ちょっと怖い。









 まわりを見てみると、他にもいくつか芽が
 でている。茶色く映っているのは種の皮。



 急成長したカイワレの謎を解くべくよくよく観察したところ、すぐ答えがわかった。

昨日いつもより多めに水を与えたため、苗床(テンパ)をおいてある容器には

ヒタヒタに水がたまっていた。そこに、苗床から種が一粒おちたのだ。

その種が存分に水を吸って成長したようである。ああ、よかった。テンパ関係なかった。


 そのため、残念だがこのカイワレはテンパから出たものとはみなせず、

この企画においては評価できないカイワレとなってしまった。

うん、普通のカイワレとしては、すごく正しいんだけどねぇ。


 このことは、今の世の中環境によって物事の価値は簡単にかわってしまう

ということを暗に意味しているように思う。

ああ今日もまた、僕はカイワレに学んだ。カイワレを育ててよかった。



カイワレを育ててよかった。(うつろな目で)



 そして、今回気づいたことがもう一つ。

水につけただけのカイワレは驚くほどの速さで成長したにもかかわらず、

テンパに埋め込まれたカイワレはじりじりとしか育つ気配がない。

これはつまり、テンパには苗床としての価値はないことを示しているのだ。




・・・当たり前だ。元々あるわけないだろ、そんな価値。




 そうだ。何をいまさら。そんなことわかりきってたことだ。

それに価値がない方が僕的にはありがたいのだ。苗床ヘアーとか言われたくないし。

そうだ、天然パーマだって普通の髪とかわんないってことだ。よかった!









 でも、どこか寂しさを覚えた。











 成長は遅いとはいえ、テンパからも確実に
 芽は出てきている。
 昨日より、さらに多くの水をやることにした。
 髪の毛の1/3くらいは水に浸る。


上から見た図




 
・7月5日 (月) 



部屋と、カイワレと、私。そんなフレーズ。

それなりにユーモラスだし、語感もいい。悪くないと思う。



だからなんだと言われればそれまでだが、近頃そんなことばかり考えている。



 今日は、はじめて朝しっかりとチェックすることができた。

昨日にくらべ、非常に伸びていた。



水につかっちゃってたヤツが。


 







 いくら伸びても、お前はダメなんだって。










 ちなみにダメなヤツがもう一人。増えてた。


しかし、昨日水の量を増やしたことにより

髪の毛にしっかりと収まっている種たちにも、発芽するものがでてきていた。

少し、うきうきした気分で大学に向かった。



 しかし、カイワレ一つでちょっぴり元気になっている自分にきづき、沈む。





 夜、帰宅。

朝にくらべ、若干伸びたようだ。嬉しい。



昨日今日の二日で、カイワレに愛着が沸いてきている。

ふと、名前を、つけようかな・・・?という考えたが浮かんだが、すぐ打ち消した。


  ・・・毎朝毎晩、黒い球体から生える植物にむかって話しかける僕・・・


 危ない。僕、危ない。

いくら一人暮らしが寂しいからといって、そんな僕は危なすぎる。



 このように、カイワレは僕に人生の教訓を与えるだけでなく、

時として深い闇に引き釣り込もうとする。気をしっかりもて。僕。









 水につかり組の二人は、相変わらずの成長
 ぶり。しかし、他の種もしっかりと伸びている。
 この画像からはそれが見て取れず。無念。


見えづらくてゴメンなさい




あと、言っておきたいことが一つ。

ここを見ている人たちの大半は、

『この企画、何がおもしろいのかな。』と思っているだろう。





僕のほうが断然そう思っている。思っているんだよ!



 


 
・7月6日 (火)




 朝。



一昨日・昨日と多めに水を与えたのが、良かったか。



それとも、悪かったのか。








 急成長。









今回はしっかりと毛の中から生えております。



昨日まで、その体を半分を髪にうずめていたカイワレたちが

我先にと顔を出し始めていた。もじゃっとした球体から生えるカイワレ。




それを見て、あらためて思いなおす。なんだこれ。




昨日までの間に、わずかながら僕の心に芽生えていたカイワレへの愛着。

そんなものは一瞬にして吹き飛んだ。ほんとに、なんだこれ。気味が悪い。

軽く触れてみようかと思ったが、念のためヤメておいた。

念のため。





夜。いつもより若干早く、9時過ぎに帰宅する。


すぐさま、カイワレの様子を見にいく。









 うわー!あからさまに伸びてる!




 わかりにくいので、今朝の画像と並べてみる。



 ←朝 夜→



およそ半日で、異常な成長をとげるカイワレ。

まぁ、”異常な”といったもののカイワレとしては普通の成長速度なのだろう。

それでも、僕は思ったのだ。異常だと。






もう、僕には、カイワレには見えなかったのだ。




※僕の目には、こう映った。

妖怪・もじゃかいわれ。








・・・観葉植物には、人をリラックスさせる効果があるそうだ。



しかし、このカイワレは僕に極度の緊張感を与え続けている。

今日は、眠れそうにない。







 
・7月7日 (水)




 七夕。


竹のかわりに、カイワレに短冊を吊るしてみようかと少し考えた。

願いごとはもちろん、『カイワレが無事育ちますように。』だ。


やめておいた。




 〜 昼 〜



 昨晩よく眠れなかったせいか、昼過ぎまで起きることができなかった。

カイワレのせいで私生活に影響が出始めた。まずい。まずいだろ。


そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、カイワレは今日も伸びていた。










 伸び伸び・青々してます。



まさに『親の心、子知らず』とはよくいったものである。はぁ。



・・・いや、待て。親じゃない、僕は親じゃないぞ!

そんな風に、ふいに頭に浮かんだ言葉を必死で否定しながら大学に向かった。



親じゃ、ないからな!






 〜 夜・PM8:30、帰宅 〜


いつもより早めに帰宅することができた。先輩が用事で早く帰ったためだ。

けしてカイワレが気になって帰ってきたわけでない。断じて、ない。



とはいえ、帰宅して真っ先にすることはカイワレを見ることである。

・・・子供の顔みたさに、急いで家に帰るサラリーマンの気持ちが、少しわ


・・・わ、わかるか!そんなもん、わかるわけあるか!



そう一度気を引き締めてから、カイワレを見る。








 僕の期待に応え、しっかりと伸びていた。








 届け。天の川まで。
 織姫と彦星の再開に水をさせ!



・・・これはもう、完全に生えている。

僕の髪の毛から、完全に生えている。思わず口元がゆるむ。

そしてふと思ったのだ。



 ああ、可愛いやつ。



これが、その時の正直な気持ちだった。

この気持ちの悪い物体を、どこかいじらしく思ってしまっていたのだ。




・・・今、僕のことを『アホなヤツだなー。』と思った人。

その気持ちを否定する気はない。

だだな、それを見てる、あんたたちもアホなんだよ!

同じアホなら踊らにゃそんそん、なんだよ!



待て、それはあくまで”踊る”ことに関してだ。

今、僕は踊ってるわけではなく、髪の毛でカイワレを育てているのだ。

・・・断然バカだ・・・僕のほうが・・・。



下手に自分を正当化する理由を思いついたばかりに、

無駄に辛い思いをしてしまった。そんな一日。




もう、終わりにしようと思う。






 
・7月8日 (木)



 時刻00:00。

これで丸々一週間、カイワレを育ててきたことになる。

その甲斐あってカイワレは見事に成長してくれた。

見事に。気持ち悪いほどに。




時刻00:04







 各々、立派に。好き勝手に伸びております



そして今もなおしっかりと根をのばし、成長をつづけるカイワレ。

特にここ2・3日、髪の毛から頭をだしてからの成長速度はすごい。

夜眠り、朝見るとまた伸びているのだ。



 ・・・いや、それは成長速度の問題なのか?

 まさか、僕が眠っている間になにか・・・



やめよう。そんなわけがない。それに、また眠れなくなる。

さぁ、くだらないことは忘れてもう寝よう。



でも今日は電気は消さないでおこう。





朝。





昨晩の予感は、当たっているんじゃないかと思わせるほど、

また、伸びていた。









 おらー!野郎共、いくぜー!って感じ。


寝る前からくらべ、1cm以上伸びたヤツもいるのではないだろうか。

そう思いながら、日課となった水やりをする。

水をやりながら、『・・・水より、虫とかのほうがいいかも』と考えたりもする。



そして今日も大学へ。






夜。帰宅。


当然、また伸びていた。







 手前の白いやつに注目。

その姿は、僕に雛の巣立ちを連想させた。

みなそれぞれ立派に自立し、髪の毛から生えている。

中には伸びすぎちゃって、自重をささえられなくなり倒れてしまったやつまで。


それをみて、僕は思った。終わりだと。

僕がみてみたかった、”テンパからカイワレが生える”という映像は

十分みることができたのだから。



もう、終わりにしよう。




先日読んだ本の一節に、こんなものがあった。




 
本当にひとり立ちしたい人は、なにかを育てるといいのよね。

 子供とかさ、鉢植えとかね。

 そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからがはじまりなのよ。




この文章の『なにかを育てる』の”なにか”に

天然パーマから生えたカイワレが含まれるかは僕にはわからない。

しかし、なんとなく自分の限界はわかったような気がする。






ただ、これがはじまりではない。終わりなのだ。






・・・終わりったら、終わりなんだよ!






〜カイワレメガネ・完〜

『キッチン』です



 
・7月16日 (金)




 その日、僕は池袋に来ていた。片手にカイワレを持って。



ことの始まりは一昨日。

面識はないが、蓮さん(このサイトの人)という方とメッセってたところ

この企画の話題になった。

その際に、先方があまりに『カイワレを食べろ』『カイワレを食べろ』言ってくるので

僕は鼻くそをほじりながら だったら、アンタが食べろ! と言い返したところ。



『うん。』



 ・・・えー、え?ま、まじで?



『うん。』



 そして、池袋へ。はぁ。












 もっていったカイワレ。実は、観賞用とは別に
 携帯用としてビンの方でも育ててました。



いけふくろうの前で待ち合わせをする。

事前に”貧血で倒れた”という連絡を受けていたため、顔色の悪い人を探す。

一発で見つかる。うわー、見るからに体調悪そー!・・・といった感じの人だった。



・・・こんな人に、こんな特殊なもん食わせて大丈夫なのか・・・?



そう思うと同時に、先日、一足先にカイワレを食べたかのんさんからの

『お腹壊しました』という報告が頭をよぎる。




・・・大丈夫じゃ、ないだろうなぁ・・・。




ため息と共に、居酒屋へ。(ポケットの中に正露丸をつめこんで)







 運ぶ途中で、何本か折れてしまった。 


居酒屋につくなり、テーブルの上にだされるカイワレビン。

塩などの調味料の隣におくと意外と違和感はない。

とか思ったのだが、注文を取りにきた店員はばっちり見ていた。

違和感は、あるようだ。僕が見慣れてしまっていただけのようだ。はぁ。



その後、カイワレの味がしっかりとわかるようにとおぼろ豆腐を選択・注文する。



豆腐が届くまでの間、ビンからカイワレを抜いていった。

思いのほかしっかりと生えている。力をこめて引き抜く。

あらわになる根っこ。ん、根っこ?なんだこれ?



なんか、すげー黒いんですけど。

しかもめちゃくちゃ髪の毛絡まってるし・・・。



ふと、隣の蓮さんの顔をみてみると。

笑顔が幾分か強張っているような。顔色も一段と悪く。





気づかないフリをする。





その後、何気ないそぶりで根っこの部分を引きちぎる。

ほら、こうすればね!大丈夫!


・・・大丈夫?


そんな不安の中、豆腐が運ばれてくる。

そして若干躊躇しながらも、おもむろに、豆腐の上に、まく。











 案外きれい。
 とても髪の毛から生えたものとは思えない。


ん、いける。見た目には、全く問題ない。


・・・よし、いけ!蓮さん、くえ!


とか言いませんヨ。ちゃんと僕から食べますヨ。

そして。期待と不安の中。

豆腐とカイワレを口にいれ。しっかりと。

噛む。噛む噛む。



口の中に広がる、ほのかな辛味と。ほどよい苦味。

溢れでる、後悔。


・・・あぁ、やっぱりやっちゃったよ・・・






・・・普通に美味しいよ・・・







市販のカイワレとなんの遜色もない味。

『テンパで育てたら、こうなる!』的なものは微塵もなかった。普通。いたって普通。

だから僕は食べたくなかったんデス。

期待されるような珍しいことなんて起こらないわかってたんデス。ぷすん。



その後、蓮さんにも食べてもらうが反応は全く一緒だった。

ごめんなさいね。普通で、ごめんなさいね?


普通であることを謝罪しなければないというこの状況。

何かが歪んでいるとしかいいようがないのだが、ほんと普通で、ごめんなさいね?





その後、居酒屋にて何事もなかったように酒を飲む。

カイワレなんて、なかったように酒を飲む。忘れよう。早く、忘れよう。



そして残るは、カイワレを取り去られ、ただ髪の毛がつまっているだけの小瓶。

兵どもが夢の跡。夢ってか、悪夢。




帰り際。一瞬このビンをそのまま店に置き去りにしようかと悩んだが

なんだか大騒動になりそうな予感がしたので、やめておいた。




・・・電車においてやろう・・・




なんちて。なんちて。ね?

結局、不燃物のゴミ箱に放り込んだ。

それでもやはり不審物として取り扱われてないか、心配だ。

そしてゴミ箱の中で、捨てた髪の毛が不穏な動きをしていないか、心配だ。




しかし、カイワレを食べそのビンを投げ捨てた今。

僕はいい様ない満足感と充実感にみたされて、ない。ないよ!

残ったのは、取れる気配のないやるさなさだよ!!


それに、家にはまだ観賞用のカイワレがのこっているんだよおおお!

ああああああああああああああああああああああああああああああ!






・・・・





というわけで。

最初から最後まで目的がみえず、漫然とした雰囲気にみちたこの企画。

これにて終わろうと思う。




みなさん、長らくお付き合いいただきましてありがとうございました。




===追伸===




この企画を提案・協力、そして共に実行してくださった
かのんさん。

ありがとうございました。


また、試食を申し出ていただきました蓮さん。ありがとうございました。

(蓮さんのカイワレ試食レポートはこちら